コミック発売のお礼と、#塔メイ豆知識シリーズ

ご無沙汰しております。澁澤です。

おかげさまで昨日、『塔の医学録 ~悪魔に仕えたメイドの記~』コミック第1巻が発売となりました。ご予約いただいた方やご購入いただいた方、ここまで応援してくださった方、出版にかかわってくださった皆様に感謝申し上げます。

コミックナタリー|悪魔と呼ばれる青年と魔女の名を持つ少女によるゴシックサスペンス1巻

現在上記リンク先では、期間限定で第1話をまるごと試し読みできるそうです。未読の方はこの機会に是非お楽しみください。

さて、タイトルにも付けました「#塔メイ豆知識」。

単行本には解説コラムもつきましたが、これは雑誌連載や単話配信をお読みの方向けに、少しでも余計に漫画を楽しんでいただくべくTwitterで投稿しているシリーズです。
歴史だけでなく科学系の豆知識も混じっていますが、全てまとめてみたいと思います!

#塔メイ豆知識 シリーズ

連載前の一コマ

写本については以前こちらの記事でも扱いましたが、当時は紙自体が高級品の上、活版印刷もないので丁寧に書いた手書きの文字ももはや芸術。

ちなみに、これらの本は現在のように1冊ごとにひとつの作品ではなく、割と雑多なものをまとめて綴じたりもしているようですね。

こちらは正直に言って不自然な存在ですが、写字用の机。一般的なお城にあるかはわかりませんが、合理主義者のヨハンなら取り寄せることでしょう。

第1話

銀で毒を見ること自体は良く知られていますが、意外と広まっていないのが不純物の存在。
毒殺に使われる「ヒ素」は、白色無味無臭で当時の技術では遺体からも発見できなかった三酸化ヒ素As2O3です(後に簡単に発見できるようになり『愚者の毒』という名が付きます)。
三酸化ヒ素は、8世紀のアラビアでジャービル・イブン・ハイヤーンが発見しました。これは硫砒鉄鉱FeAsSから精製するのですが、不十分な精製技術では硫砒鉄鉱に含まれる硫黄が残ってしまうのです。そして、硫黄は銀を硫化させ、硫化銀は黒くなる、というのが毒見の原理でした。

引用元で植物毒の話をしている通り、実際に犯罪によく使われるようになるのは中世後期からと言われています。塔メイで登場するのは、東方の医学や科学に傾倒しているヨハンだからこその実験だったといえますね。

そして、銀貨のデザインにも要注目です。なんとエルサレム王国のドゥニエ硬貨! これをチョイスする尺鳥先生のセンスの良さ、脱帽です。

第2話

これは単行本のコラムでも書きました。塔メイのファンタジー要素のひとつです。

ルネサンス以後魚と占められていた「中世」の価値が再発見された19世紀。ロマン主義とその流れにあるゴシック・リヴァイバルは、歴史的に正確な「中世」ではないものの、今も私を含め多くの人々を惹きつける素敵な存在です。

ちなみに、いわゆるゴシック・ファッションがゴシックを名乗りつつも13世紀風ではなく19世紀風なのも、このリヴァイバルの方のゴシック思想を引き継いでいるからと思われます。塔メイのキャッチコピーも「ゴシック・サスペンス」ですが、舞台は12世紀なので「ゴシック小説」の文脈のゴシックです。ややこしいですね笑

第3話

当時の庶民の寝床と言えば藁のマットレス。寝心地は良くなさそうですが、一応ふわふわとしてはいると思います。
ちなみに私は昔見たとあるアニメ映画で藁に直接寝転ぶシーンを見て以来、ちょっとした憧れがあります……

第4話

このお猿さんはバーバリーマカクという種類を想定しています。インドからきたハヌマンラングールという種類の可能性もありますが、○○に見間違える可能性はバーバリーマカクの方が高そうかなと思いました。いずれにしてもとんでもない長旅をがんばりました。

第6話

第5話の豆知識投稿を忘れていて、第6話。改めて紙の重要性を感じます。逆に言うと、これは「わざわざ紙に書くような内容」だったということでして……


別に知らなくても何も困りませんが、知っておくと面白いのが豆知識というもの。今後もちょっとしたお楽しみになるような1tweetをご用意できればと思います。